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錠剤サイズのデバイスで心拍数などをモニタリングする研究が前進

 新たな「ハイテク錠剤」によって体内でバイタルサインのモニタリングを安全に行えることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の消化器内科医で米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学分野のGiovanni Traverso氏らの研究で示された。この研究結果は、「Device」11月17日号に発表された。 このバイタル・モニタリング・ピル(以下、VMピル)は、呼吸や心拍に伴う体内のわずかな振動を追跡することで機能するデバイスだ。もし、VMピルを飲み込んだ人の呼吸が止まれば、VMピルはそれを検知することができる。そのため、VMピルからオピオイド過剰摂取のリスクがある患者の情報をリアルタイムで得られる可能性もあるという。 Traverso氏は、「入院することなくさまざまな疾患の診断やモニタリングができるようになれば、患者は医療にアクセスしやすくなり、治療のサポートにもつながる」と話す。Traverso氏らは今回の研究の背景情報を説明する中で、VMピルのようなインジェスティブルデバイス(経口摂取型デバイス)は、ペースメーカーのような植込み型デバイスとは異なり、外科的処置が不要なため使いやすいと説明している。現在、多くのインジェスティブルデバイスが開発段階にある。その一例として、通常であれば病院で鎮静薬を使用する必要のある大腸内視鏡検査に錠剤サイズのインジェスティブルカメラが用いられている。 論文の共著者で、マサチューセッツ州に本社を置く医療機器開発企業のCelero Systems社の創立者でもあるBenjamin Pless氏は、「医師がこれらのカプセルを処方し、患者はそれを飲み込むだけで良いというのが、インジェスティブルデバイス使用の考え方だ。患者は錠剤を飲むことに慣れている。また、インジェスティブルデバイスを使う方が、従来の医療処置を行うよりもコストを大幅に抑えられる」と説明している。 研究グループは、麻酔をかけたブタの胃にVMピルを入れ、呼吸停止をもたらす量のフェンタニル(鎮痛薬)を投与し、ヒトがフェンタニルを過剰摂取した際に起こるのと似た状態を作り出した。その結果、VMピルはブタの呼吸数を測定して研究グループに警告を発したため、研究グループは過剰摂取からブタを回復させることができた。 VMピルをヒトに使う試験も行われた。この試験では、米ウェストバージニア大学で睡眠時無呼吸の検査対象者10人に、VMピルを飲み込んでもらった。睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸の一時的な停止と再開を繰り返す疾患だ。バイタルサインをモニタリングするデバイスで異常が検出された場合には、実験室で眠っている間に対象者を観察する必要があるため、診断が難しい疾患と見なされている。Pless氏は、「われわれはオピオイドの安全性に関心を持っていたため、オピオイドによる呼吸抑制と同じ症状がよく生じる睡眠時無呼吸に着目した」と説明している。 その結果、VMピルは飲み込んだ人の呼吸停止を検出し、呼吸数のモニタリングの全体的な正確性は92.7%であることが示された。また、心拍数のモニタリングの正確性は96.2%で、VMピルは数日以内に安全に排出された。 論文の上席著者で米ウェストバージニア大学ロックフェラー神経科学研究所のAli Rezai氏は、「これらの測定値の精度と相関性は、われわれが睡眠実験室で行った、臨床的にゴールドスタンダードとされる方法による研究と比べても優れていた。ワイヤーやリード線を使わず、医療技術者も必要とせず、患者の重要なバイタルサインを遠隔で監視するVMピルの機能は、クリニックや病院ではなく、通常の環境で患者のモニタリングを行う道を開く可能性がある」と付け加えている。 なお、現バージョンのVMピルは約1日をかけて体内を通過するが、Traverso氏は、「より長期間のモニタリングを行うために、体内により長くとどまるようVMピルを改良できるだろう」と話している。

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手術中のオピオイド投与削減は患者転帰に悪影響を及ぼす

 オピオイド乱用の問題が深刻化している米国では、多くの医師が、たとえ手術中であってもオピオイド系鎮痛薬(以下、オピオイド)の投与を控えている。こうした中、このアプローチに疑問を投げかける研究結果が報告された。手術中のオピオイド投与量が多いほど、術後は短期的にも長期的にも疼痛が軽く、オピオイドの累積投与量も少なくて済むことが明らかになったのだ。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のLaura Santa Cruz Mercado氏らによるこの研究結果は、「JAMA Surgery」に6月14日掲載された。 この研究では、2016年4月から2020年3月の間にMGHで全身麻酔による非心臓手術を受けた成人患者6万1,249人の電子カルテを用いて、手術中のオピオイド(フェンタニル、ヒドロモルフォン)投与と手術後の疼痛およびオピオイド投与との関連を検討した。帝王切開を受けた患者、フェンタニルおよびヒドロモルフォン以外のオピオイドを投与された患者、ICU入室患者などは対象から除外された。患者の平均年齢(標準偏差)は55.44(17.08)歳であり、女性が53.5%を占めていた。主要評価項目は、麻酔後ケアユニット(PACU、手術後回復室)滞在中の最大疼痛スコアとオピオイドの累積投与量とし、疼痛とオピオイド依存症に関連する中・長期的転帰の評価も行った。 その結果、手術中のフェンタニルやヒドロモルフォンの投与はともに、PACUでの最大疼痛スコアの低下と関連することが明らかになった。また、これらのオピオイドの手術中の投与は、PACUでのオピオイドの使用頻度の低下や累積投与量の減少とも関連していた。特に、手術中のフェンタニル投与量の増量は、制御不能な疼痛の発生頻度の低下、手術後3カ月時点での新たな慢性疼痛診断の減少、30日、90日、および180日後のオピオイド処方の減少、新たな持続的オピオイド使用の減少と関連していた。一方で、副作用の有意な増加は認められなかった。 こうした結果を受けてSanta Cruz Mercado氏は、「オピオイドの使用リスクを軽減しようとする動きの背景には、オピオイド危機がある。しかし、手術中の適切なオピオイド投与は、手術後のオピオイド総使用量を減らす可能性がある」と話す。 研究グループは、全身麻酔の効果が切れたときに、患者が痛みを感じないようにすることの重要性を強調する。そうすることが、患者の短期的なウェルビーイングのために重要なだけでなく、持続的な疼痛の発生や長期にわたるオピオイド使用などの問題発生の抑止にもつながるのだという。 研究論文の上席著者である、米ハーバード大学医学大学院麻酔学分野のPatrick Purdon氏は、オピオイドの使用に関するより明確な指針を手術チームに提供するためには、さらなる研究が必要だと話す。同氏は、「われわれは、麻酔科医が手術室でのオピオイド投与量を患者ごとに最適になるように調整するための新たな技術を開発する必要がある。今回の研究結果は、そのような取り組みが、長期的には大きな利益をもたらす可能性があることを証明するものだ」と述べている。 なお、本研究は米国立衛生研究所(NIH)から一部資金提供を受けて実施された。

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FDAがオピオイド過剰摂取に対するOTC医薬品を初承認

 米食品医薬品局(FDA)は3月29日、スプレー式の点鼻薬ナロキソン塩酸塩(商品名Narcan)を、処方箋不要のOTC医薬品として初めて承認した。オピオイド過剰摂取の影響を速やかに抑える作用を持つNarcanは、オピオイド過剰摂取の標準治療法とされている。 米国では、薬物の過剰摂取が公衆衛生上の大きな問題となっている。2022年10月までの12カ月間に報告された、違法なフェンタニルなどの合成オピオイドを中心とする薬物の過剰摂取による死亡の発生件数は、10万1,750件以上に上るという。 FDAコミッショナーのRobert Califf氏は、「今回のNarcanのOTC医薬品としての承認は、Narcanへのアクセスを改善して同薬剤を入手できる場所を増やし、米国でのオピオイド過剰摂取による死亡を減らすのに役立つ。われわれはNarcanの製造販売会社に、できるだけ早く手頃な価格でNarcanを入手できるようにすることで、製品へのアクセス性を優先するように促している」と述べる。 Narcanを製造している米メリーランド州のEmergent BioSolutions社は、FDAの承認発表後に出した声明の中で、価格については言及していない。しかし、同社の社長兼CEOであるRobert Kramer氏は、「われわれは、米国でのオピオイド過剰摂取の発生率が憂慮すべきものになっていることに鑑み、この重要な緊急治療へのアクセスを広めようと努めてきた。その成果である今回の承認は、当社にとって歴史的な節目となるものだ」と同社のニュースリリースで述べている。 オピオイド依存症の人がこの点鼻薬を使用すると、体の痛み、下痢、心拍数の増加(頻脈)、発熱、鼻水、くしゃみ、鳥肌、発汗、あくび、吐き気または嘔吐、神経質、焦燥感やイライラ感、震え、腹部のけいれん、脱力、血圧上昇を特徴とする、重度のオピオイド離脱症状が生じる可能性がある。 Narcanは、2015年に処方薬として初めてFDAに承認された。医薬品のステータスを処方薬から非処方薬に変更するプロセスにおいて、Emergent BioSolutions社は、ラベルに記載された通りに使用すれば、この薬剤が安全かつ有効であることを示すデータを提供した。また、医療従事者が監督していなくても、消費者がNarcan点鼻薬の安全かつ効果的な使用方法を理解できることも示した。同薬剤の承認申請には優先審査資格が与えられ、2023年2月に開催された諮問委員会では、全会一致で処方箋なしでの販売承認の推奨が決定された。 FDAの非処方薬部門の安全性担当副部長であるJody Green氏は、「われわれは、今回の承認がオピオイド過剰摂取に対する治療薬へのアクセス拡大に役立つと確信している」と述べている。またAP通信は、同氏が「この承認を受け、Narcanは自動販売機、コンビニエンスストア、スーパーマーケットで販売できるようになるだろう」との見方を示したことを報じている。

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気管挿管時の誤嚥回避に、レミフェンタニルは有効か/JAMA

 手術室での迅速導入気管挿管時に、誤嚥のリスクがある成人患者において、即効性オピオイドであるレミフェンタニルは神経筋遮断薬と比較して、重度合併症を伴わない初回挿管の成功に関して非劣性を達成できず、むしろ統計学的に有意に劣ることが、フランス・ナント大学のNicolas Grillot氏らの検討で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月3日号に掲載された。フランス15施設の無作為化非劣性試験 本研究は、フランスの15施設が参加した非盲検無作為化非劣性試験であり、2019年10月~2021年4月の期間に、患者の登録が行われた(フランス保健省の助成を受けた)。 対象は、年齢18~80歳、手術室での全身麻酔時に経口気管挿管を要し、肺誤嚥のリスク因子(術前空腹期間が6時間未満、腸閉塞、麻酔前12時間以内の嘔吐、術前12時間以内の外傷、重度の症候性の胃食道逆流など)を1つ以上有する患者であった。 被験者は、催眠薬投与直後にレミフェンタニル(3~4μg/kg)または神経筋遮断薬(サクシニルコリン[スキサメトニウム]またはロクロニウム1mg/kg)の静脈内投与を受ける群に無作為に割り付けられた。両群とも投与終了から30~60秒後に気管挿管が開始された。 主要アウトカムは、重度合併症を伴わない初回挿管の成功であった。合併症は、消化物の肺への誤嚥、酸素飽和度の低下、血行動態の重度の不安定化、持続性不整脈、心停止、重度のアナフィラキシー反応と定義された。事前に規定された非劣性マージンは7.0%。非劣性の可能性は残る 1,150例(平均年齢50.7歳[SD 17.4]、女性573例[50%])が無作為化の対象となり、1,130例(98.3%)が試験を完遂した。両群に575例ずつが割り付けられた。腸管閉塞・イレウス・嘔吐が613例(54.1%)にみられ、気管挿管の理由として最も多かったのは消化管の手技であった。 as-randomized集団(無作為化の対象となったすべての患者)では、重度合併症を伴わない初回挿管の成功の割合は、レミフェンタニル群が66.1%(374/575例)、神経筋遮断薬群は71.6%(408/575例)であり(補正後群間差:-6.1%、95%信頼区間[CI]:-11.6~-0.5、非劣性のp=0.37)、レミフェンタニル群の劣性が示された。 per-protocol集団(割り付けられた薬剤の投与を受けた全適格例)では、レミフェンタニル群の66.2%(374/565例)、神経筋遮断薬群の71.3%(403/565例)で、重度合併症を伴わない初回挿管の成功が達成された(補正後群間差:-5.7%、両側95%CI:-11.3~-0.1、非劣性のp=0.32)。 試験薬投与から挿管成功までの平均時間は、レミフェンタニル群が2.5分(SD 1.0)、神経筋遮断薬群も2.5分(SD 1.2)であった(補正後平均群間差:0.0分、95%CI:-0.1~0.2)。術後7日の時点での肺炎の発生率は、それぞれ0.5%および0.4%だった(0.1%、-0.5~0.7)。 重度の有害事象は、レミフェンタニル群が2.1%、神経筋遮断薬群は0.5%で発現した(補正後群間差:1.8%、95%CI:0.4~3.2)。また、血行動態不安定が、それぞれ3.3%(19/575例)および0.5%(3/575例)で認められた(2.8%、1.2~4.4)。 著者は、「レミフェンタニルの効果は神経筋遮断薬よりも統計学的に有意に劣っていたが、効果推定値の信頼区間が広いため、非劣性の可能性が残されており、両群の差の臨床的妥当性について結論するには限界がある」と指摘している。

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英語で「湿布」は?【1分★医療英語】第55回

第55回 英語で「湿布」は?I twisted my ankle.(足をくじいてしまいました)Place this patch on the painful area.(痛むところに、この湿布を貼ってください)《例文1》Apply the patch to a clean, dry, and hairless skin area.(清潔で乾いた毛の少ない部分に湿布を貼ってください)《例文2》Remove the patch after 24 hours and choose a difference place to apply the new patch.(24時間したらパッチを取り外し、別の場所に新しいパッチを貼ってください)《解説》「湿布(貼付剤)」は“patch”(または“transdermal patch”:経皮貼付剤)といいます。日本語でも「パッチ剤」と呼ぶこともありますよね。冷湿布や温湿布を指す場合には“cold compress / hot compress”と表現します。冷または温のジェル状のものを“compress”(当てる=圧縮する、押し付ける)する、というわけで、こちらは薬剤が入っていない場合がほとんどです。アルツハイマー型認知症の経皮吸収型製薬である“rivastigmine”(リバスチグミン)パッチなどの場合には、前のものを剥がし忘れたまま複数のパッチを貼ってしまうことのないよう、《例文2》のようにパッチを取り外すことの説明を加えるとよいでしょう。また、合成オピオイドである“fentanyl transdermal patch”(フェンタニルパッチ)を誤ってペットや子供が触ってしまう事故を避けるために、“Promptly dispose of used patches by folding them in half with the sticky sides together.”(使用後のパッチは、粘着面を内側にして半分に折り、即座に処分してください)と伝えることも大切です。講師紹介

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知っておきたい新しいオピオイド(1)タペンタドール【非専門医のための緩和ケアTips】第35回

第35回 知っておきたい新しいオピオイド(1)タペンタドール私が緩和ケアの仕事を始めた頃と比べ、臨床で活用できるオピオイドが増えています。今回は、国内承認が比較的最近で、使ったことのある方がまだ少ないと思われる「タペンタドール」についてお話しします。今日の質問「オピオイドといえばモルヒネ」という時代からすると、さまざまなオピオイドの選択肢が増えたことは良いのですが、使い分けがよくわかりません。先日、がん拠点病院から紹介されてきた患者さんは、タペンタドールというオピオイドを内服していました。どういった特徴のある薬剤なのでしょうか?タペンタドール(商品名:タペンタ)は、2014年に保険承認されました。緩和ケアを専門とする医療者には広く知られるようになった一方で、プライマリ・ケア領域では、まだ使用経験のない先生も多いでしょう。タペンタドールは「強オピオイド」に位置付けられる薬剤です。日本では徐放製剤のみが発売されており、適応は各種がんにおける中等度から高度の疼痛です。タペンタドールは薬理学的にはユニークな特徴があります。腎機能障害があっても使用ができ、便秘が少ないとされています。このあたりはモルヒネと比較して、好んで使用される特徴でしょう。オピオイドはμオピオイド受容体を介した鎮痛効果が中心ですが、タペンタドールはSNRI様作用も有しています。SNRIと聞いて抗うつ薬を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。緩和ケア領域では抗うつ薬を神経障害性疼痛に対する鎮痛補助薬として用います。タペンタドールはこの鎮痛補助役としての作用も有する、ユニークなオピオイドなのです。より薬理学的なポイントとしては、「CYP2D6」という酵素活性に影響を受けない代謝経路になっていることが挙げられます。これは他薬剤との併用の際に大切です。併用薬剤によっては代謝酵素に影響を及ぼし、作用が減弱したり逆に予想よりも強く出たり、といった相互作用が生じるのです。さらなる特徴は、オピオイドの濫用防止の加工がしてあることです。粉砕できないように加工されており、水に溶かすとネバネバのゼリー状になります。よって、経管投与ができません。注射薬もないので、内服が難しくなりそうな患者の場合は、早めに別のオピオイドに変更するマネジメントが必要になります。私がタペンタドールが最も適すると感じるのは、頭頸部がんの難治性がん疼痛の患者、抗真菌薬のような相互作用に注意が必要な薬剤をよく使う血液腫瘍の患者さんなどです。もちろん、こうした患者さんは内服が難しい状況にもなりやすいのでその見極めも必要です。そうした意味では、少し“上級者向け”のオピオイドといえるかもしれません。今回のTips今回のTipsタペンタドールはユニークな特性を持つ、少し“上級者向け”のオピオイド。

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薬物性味覚障害マニュアルが11年ぶりに改定、注意すべき薬剤と対策は?/厚労省

 『重篤副作用疾患別対応マニュアル』は77項目に細分化され、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに掲載されているが、今回、「薬物性味覚障害」の項が11年ぶりに改定された。薬剤性味覚障害は味覚障害の原因の約20%を占めていること、多くの薬剤の添付文書の副作用に記載されていることから、以下に示すような薬剤を服用中の患者の訴えには十分注意が必要である。<添付文書に口腔内苦味の記載がある薬剤の一例>・ニコチン(禁煙補助剤)・フルボキサミンマレイン酸塩(選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI])・ラベプラゾールナトリウム(PPI)・レバミピド(胃炎・胃潰瘍治療薬) ・レボフロキサシン水和物(ニューキノロン系抗菌薬)・炭酸リチウム(躁病・躁状態治療薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚障害の記載がある薬剤の一例>・アロプリノール(キサンチンオキシダーゼ阻害薬・高尿酸血症治療薬)・ジクロフェナクナトリウム(フェニル酢酸系消炎鎮痛薬)・レトロゾール(アロマターゼ阻害薬・閉経後乳癌治療薬)・ロサルタンカリウム(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照<添付文書に味覚異常の記載がある薬剤の一例>・アカルボース(α-グルコシダーゼ阻害薬)・アプレピタント(選択的NK1受容体拮抗型制吐薬)・イリノテカン塩酸塩水和物(I型DNAトポイソメラーゼ阻害型抗悪性腫瘍薬)・インスリンデグルデク[遺伝子組換え]・リラグルチド[遺伝子組換え](持効型溶解インスリンアナログ/ヒトGLP-1アナログ配合薬)・エルデカルシトール(活性型ビタミンD3)・オロパタジン塩酸塩(アレルギー性疾患治療薬)・チアマゾール(抗甲状腺薬)・テルビナフィン塩酸塩(アリルアミン系抗真菌薬)・バルサルタン(選択的AT1受容体遮断薬)・フェンタニル(経皮吸収型持続性疼痛治療薬)・ボリコナゾール(トリアゾール系抗真菌薬)・メトトレキサート(抗リウマチ薬/葉酸代謝拮抗薬)*そのほかは重篤副作用疾患別対応マニュアル(薬物性味覚障害)参照 上記のような薬剤を服用している患者が症状を訴えた場合、まずは(1)原因薬剤の中止・減量を行うが、原疾患の治療上、中止などの対応ができない場合、または味覚障害を起こす可能性のある薬剤を複数服用して特定が困難な場合もある。そのような場合でも(2)亜鉛剤の補給[低亜鉛血症がある場合、味蕾の再生促進を期待して補給]、(3)口腔乾燥の治療などで唾液分泌を促進させる、(4)口腔掃除とケアで対応することが必要で、とくに(1)(2)は重要度が高いと記載されている。<早期に認められる症状>薬物性味覚障害は高齢者に多く、複数の薬剤を服用しており、また発症までの時間や症状もまちまちで、初期の症状を捉えることは困難なことが多い。初期症状を含め、よく訴える症状に以下のようなものがある。 1:味(甘・塩・酸・苦)が感じにくい 2:食事が美味しくない3:食べ物の好みが変わった 4:金属味や渋味など、嫌な味がする 5:味のしないところがある 6:口が渇く<患者が訴えうる自覚症状>1:味覚減退:「味が薄くなった、味を感じにくい」2:味覚消失・無味症:「まったく味がしない」 3:解離性味覚障害:「甘みだけがわからない」4:異味症・錯味症:「しょう油が苦く感じる」 5:悪味症:「何を食べても嫌な味になる」6:味覚過敏:「味が濃く感じる」 7:自発性異常味覚:「口の中に何もないのに苦みや渋みを感じる」 8:片側性味覚障害:一側のみの味覚障害 本マニュアルには医師、薬剤師などの医療関係者による副作用の早期発見・早期対応に資するため、ポイントになる初期症状や好発時期、医療関係者の対応などが記載されている。 また、患者が読みやすいように、患者やその家族に知っておいてもらいたい副作用の概要、初期症状、早期発見・早期対応のポイントをできるだけわかりやすい言葉で記載してもいるので、ぜひ参考にしていただきたい。

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VHL病の腎細胞がんにbelzutifanが有効/NEJM

 フォン・ヒッペル-リンドウ(VHL)病はVHL遺伝子の生殖細胞系列の病的変異に起因するまれな常染色体性優性の遺伝性疾患で、良性または悪性の新生物と関連し、低酸素誘導因子2α(HIF-2α)の恒常的な活性化などにより生涯に患者の約70%が腎細胞がんを発症するという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏らは、VHL病患者の腎細胞がん治療における第2世代分子標的薬のHIF-2α阻害薬belzutifan(MK-6482)の有用性について検討した(MK-6482-004試験)。その結果、本薬の有害事象は主にGrad1または2であり、VHL病関連の腎細胞がんだけでなく膵病変や網膜・中枢神経系の血管芽腫にも抗腫瘍活性を有することが示された。研究の成果は、NEJM誌2021年11月25日号に掲載された。4ヵ国11施設の非盲検単群第II相試験 本研究は、VHL病患者の腎細胞がんの治療におけるbelzutifanの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検単群第II相試験であり、2018年5月~2019年3月の期間に4ヵ国(米国、デンマーク、フランス、英国)の11施設で患者の登録が行われた(Merck Sharp and Dohmeなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、生殖細胞系列のVHL遺伝子異常に基づいてVHL病と診断され、少なくとも1個の測定可能な腎細胞がん(CTまたはMRIで最長腫瘍径≧10mm)を有し、パフォーマンスステータス(PS、ECOG基準)が0または1の患者であった。 被験者は、belzutifan 120mg(40mg錠を3錠、1日1回、経口)の投与を受け、許容できない有害事象の発現または病勢が進行するまで継続された。 主要エンドポイントは、VHL病関連腎細胞がん患者における客観的奏効(完全奏効または部分奏効)とされ、固形がん治療効果判定基準(RECIST ver. 1.1)に基づき、独立画像審査委員会による中央判定が行われた。腎細胞がん以外のがんを有する患者(網膜と中枢神経系の血管芽腫、膵病変[重度の嚢胞腺腫、神経内分泌腫瘍]など)における奏効と安全性の評価も実施された。客観的奏効率49%、2年無増悪生存率96% 61例が登録された。年齢中央値は41歳(範囲:19~66)、男性が32例(52%)で、50例(82%)はPS 0であった。膵病変が61例(100%)、中枢神経系の血管芽腫が50例(82%)、網膜血管芽腫が12例(20%)で認められた。59例(97%)が、1つ以上の腫瘍減量手技(例:腎部分切除術、開頭手術、凍結融解壊死治療)を受けていた。 追跡期間中央値は21.8ヵ月(範囲:20.2~30.1)、投与期間中央値は21.7ヵ月(1.9~30.1)であり、データカットオフ日の時点で54例(89%)がbelzutifanの投与を継続していた。 客観的奏効が得られた腎細胞がん患者は30例で、客観的奏効率は49%(95%信頼区間[CI]:36~62)であった。いずれも部分奏効で、完全奏効を達成した患者はいなかった。30例(49%)が安定と判定された。また、奏効までの期間中央値は8.2ヵ月(範囲:2.7~19.1)で、奏効期間中央値には未到達だった。 56例(92%)で全標的病変径の合計の縮小が認められた。ほとんどの患者で、治療開始前には腫瘍の増大が進んでいたが、治療開始後はこれらの患者で最大腫瘍径の縮小が観察された。24ヵ月時の無増悪生存率は96%(95%CI:87~99)だった。 膵病変を有する61例中47例(77%)で奏効が確認され、このうち6例(10%)は完全奏効であった。中枢神経系血管芽腫では、50例中15例(30%)で奏効が得られ、3例(6%)は完全奏効だった。また、ベースラインで網膜血管芽腫が見られた12例で評価が可能であった16眼では、すべて(100%)が改善と判定された。 最も頻度の高い有害事象は貧血(90%)および疲労(66%)であった。7例が治療を中止し、このうち4例は患者の自発的な中止、1例は治療関連有害事象(Grade1のめまい)による中止、1例は担当医の評価で病勢進行と判定されたことによる中止であり、1例は死亡した(フェンタニルの急性毒性)。有害事象は全般にGrade1または2であり、Grade3は20例(33%)で報告された。 著者は、「VHL病患者は、罹患臓器に生涯にわたって腫瘍が発生するリスクがあり、ほとんどの患者は生涯に数回の手術を受けており、これに伴い合併症が発生する。有効な全身療法が確立されれば、外科的な負担が軽減される可能性があり、臓器に限局したVHL病関連の新生物の管理における新たなアプローチとなるだろう」としている。

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高用量オピオイドの長期投与、用量漸減のリスクは?/JAMA

 高用量オピオイドを長期にわたり安定的に処方されている患者において、用量漸減は、過剰摂取およびメンタルヘルス危機のリスク増加と有意に関連することが、米国・カリフォルニア大学のAlicia Agnoli氏らによる後ろ向き観察研究の結果、示された。オピオイド関連死亡率の増加や処方ガイドラインにより、慢性疼痛に対してオピオイドを長期間処方された患者における用量漸減が行われている。しかし、過剰摂取やメンタルヘルス危機など、用量漸減に伴うリスクに関する情報は限られていた。JAMA誌2021年8月3日号掲載の報告。高用量オピオイドの長期投与患者約11万4千例を後ろ向きに解析 研究グループは2008~19年のOptumLabs Data Warehouseデータベースから、匿名化された医療費・薬剤費および登録者のデータを用いて後ろ向き観察研究を実施した。解析対象は、ベースラインの12ヵ月間に高用量オピオイド(モルヒネ換算平均50mg以上)を処方され、2ヵ月以上追跡された米国の成人患者11万3,618例。 オピオイドの用量漸減については、7ヵ月の追跡期間中の6つの期間(1期間60日、一部期間は重複)のいずれかにおいて、1日平均投与量が少なくとも15%相対的に減量された場合と定義し、同期間中の最大月間用量減量速度を算出した。 主要アウトカムは、最長12ヵ月の追跡期間中の(1)薬剤の過剰摂取または離脱、(2)メンタルヘルス危機(うつ、不安、自殺企図)による救急受診。統計には、離散時間型の負の二項回帰モデルを用い、用量漸減(vs.用量漸減なし)および用量減量速度に応じた2つのアウトカムの補正後発生率比(aIRR)を推算して評価した。用量漸減で過剰摂取やメンタルヘルス危機が約2倍増加 解析対象11万3,618例のうち、用量漸減が行われた患者は2万9,101例(25.6%)、行われなかった患者は8万4,517例(74.4%)で、患者背景は、女性がそれぞれ54.3% vs.53.2%、平均年齢57.7歳 vs.58.3歳、民間保険加入38.8% vs.41.9%であった。 用量漸減後の期間(補正後発生率は9.3件/100人年)は、非漸減期間(5.5件/100人年)と比べて過剰摂取イベントの発生との関連がみられた(補正後発生率の差:3.8/100人年[95%信頼区間[CI]:3.0~4.6]、aIRR:1.68[95%CI:1.53~1.85])。 用量漸減は、メンタルヘルス危機イベントの発生とも関連していた。補正後発生率は同期間7.6件/100人年に対して、非漸減期間3.3件/100人年であった(補正後発生率の差:4.3/100人年[95%CI:3.2~5.3]、aIRR:2.28[95%CI:1.96~2.65])。 また、最大月間用量減量速度が10%増加することで、過剰摂取のaIRRは1.09(95%CI:1.07~1.11)、またメンタルヘルス危機のaIRRは1.18(95%CI:1.14~1.21)増加することが認められた。 これらの結果を踏まえて著者は、「今回の結果は、用量漸減の潜在的な有害性に関する問題を提起するものであるが、観察研究のため解釈は限定的なものである」との見解を述べている。

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添付文書改訂:オルミエント錠に新型コロナ肺炎追加/イグザレルトがDOACで初の小児適応追加/オキシコンチンTR錠に慢性疼痛追加【下平博士のDIノート】第73回

オルミエント錠に新型コロナ肺炎の適応追加<対象薬剤>バリシチニブ錠(商品名:オルミエント錠2mg/4mg、製造販売元:日本イーライリリー)<承認年月>2021年4月<改訂項目>[追加]効能または効果SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)<Shimo's eyes>ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)の効能または効果に、新型コロナウイルスによる肺炎が追加されました。わが国では、レムデシビル、デキサメタゾンに続いて3剤目の新型コロナウイルス感染症治療薬となります。現在、新型コロナウイルス感染症に係る入院加療は全額公費負担となっており、本剤もその対象となります。投与対象は、入院下で酸素吸入、人工呼吸管理、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要な中等症から重症の患者で、レムデシビルとの併用で最長14日間投与することができます。経口投与ができない患者には、同剤を粉砕・懸濁して、胃ろうや経鼻移管などの方法で投与します。使用にあたっては、RMP資材である、「適正使用ガイド SARS-CoV-2による肺炎」を参照してください。バリシチニブの主な排泄経路は腎臓のため、透析患者または末期腎不全の患者は禁忌です。また、リンパ球数が200/mm3未満の患者にも禁忌となっています。治療成績としては、1,033人の患者が登録された国際共同第III相試験で回復までの期間を比較した結果、バリシチニブ+レムデシビルの併用群(バリシチニブ群)は7日、レムデシビル単独群(対照群)は8日と有意差がありました。また、重症患者216人に絞って評価したところ、回復までの期間は、バリシチニブ群で10日、対照群は18日とより大きな差が見られました。なお、本剤は2020年12月にアトピー性皮膚炎の追加適応も得ています。参考日本イーライリリー プレスリリースイグザレルトがDOACで初の小児適応追加<対象薬剤>リバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包10mg/15mg、製造販売元:バイエル薬品)<改訂年月>2021年1月<改訂項目>[追加]効能または効果小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制<Shimo's eyes>抗凝固薬のリバーロキサバン(商品名:イグザレルト錠・OD錠・細粒分包)の効能または効果に、小児に対する「静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制」が追加され、小児適応を持つ唯一の直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)となりました。また、新生児や乳幼児の服用にも適した剤型であるドライシロップ(同:イグザレルトドライシロップ小児用51.7mg/103.4mg)も承認されました。本剤は、エドキサバン(同:リクシアナ錠・OD錠)、アピキサバン(同:エリキュース錠)とともに経口活性化凝固第Xa因子阻害薬に分類されます。血液凝固系におけるXa因子の活性化部位を直接的に阻害することで、トロンビンの生成を阻害して抗凝固作用を発揮します。近年の疾患に関する認知や診断技術の向上により、静脈血栓塞栓症(VTE)と診断される小児患者数は増加しています。小児における従来のVTE治療では、ワルファリンのみが適応を持っていたため、採血による定期的な凝固系のモニタリングだけでなく、薬物相互作用や食事など多方面で配慮が必要でしたが、本剤の適応追加により、患児および介助者の負担を軽減できることが期待されています。参考バイエル薬品 プレスリリース同 イグザレルト.jp 小児:静脈血栓塞栓症の治療および再発抑制(小児VTE)オキシコンチンTR錠の適応に慢性疼痛<対象薬剤>オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠5mg/10mg/20mg/40mg、製造販売元:シオノギファーマ)<改訂年月>2020年10月<改訂項目>[追加]警告慢性疼痛に対しては、本剤は、慢性疼痛の診断、治療に精通した医師のみが処方・使用するとともに、本剤のリスクなどについても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いること。また、それら薬局においては、調剤前に当該医師・医療機関を確認したうえで調剤を行うこと。[追加]効能・効果非オピオイド鎮痛薬またはほかのオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛[追加]用法・用量慢性疼痛に用いる場合:通常、成人にはオキシコドン塩酸塩(無水物)として1日10~60mgを2回に分割経口投与する。なお、症状に応じて適宜増減する。<Shimo's eyes>オピオイド鎮痛薬のオキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(商品名:オキシコンチンTR錠)の効能・効果に、慢性疼痛が追加されました。本剤は容易に砕けない硬さと、水分を含むとゲル化するという乱用防止特性を有する徐放性製剤です。本剤は、依存や不適正使用につながる潜在的なリスクがあるため、今回の適応追加に際しては、医薬品リスク管理計画を策定して適切に実施するなどの承認条件が付され、医療機関・医師・薬剤師による厳重な管理が求められています。【オキシコンチンTR錠を慢性疼痛で使用する際の確認事項】<処方する医師>1.製造販売業者が提供するeラーニングを受講し、確認テストに合格し、確認書をダウンロードする。2.処方時に確認書の内容を患者に説明し、医師・患者ともに署名をして確認書を患者に交付する。3.確認書の控えを医療機関で保管する。<調剤する薬剤師>1.患者が持参した麻薬処方箋と確認書について、処方医名、施設名、交付日が一致していることを確認する。なお、患者が確認書を持参しておらず、がん疼痛か慢性疼痛か判断できない場合は、処方医に患者の適応を問い合わせる。2.確認書の患者確認事項を説明し、患者の理解を確認し、確認書にチェックを入れ、調剤する。近年、がん患者だけでなく、非がん患者の痛みに関する身体的症状と精神症状のケアが課題となっています。このような背景から、非がん性疼痛に適応を持つオピオイド鎮痛薬が増えてきました。すでに、トラマドール、コデインリン酸塩、ブプレノルフィン貼付薬、モルヒネ塩酸塩、フェンタニル貼付薬がありますが、今回、オキシコドン製剤として初めて本剤が慢性疼痛への適応を取得しました。参考PMDA「オキシコドン塩酸塩水和物徐放製剤の使用に当たっての留意事項について」同「確認書を用いた管理体制の全体図」シオノギ製薬「オキシコンチンTR錠で慢性疼痛の治療を受けられる患者さまへ」

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膵がん末期患者の下痢をコデインリン酸塩でコントロール【うまくいく!処方提案プラクティス】第34回

 今回は、末期がんの患者さんの下痢に対して、コデインリン酸塩錠で対処した症例を紹介します。代表的な副作用である便秘を活用することで、最終的には疼痛・排便の両方がコントロールできましたが、もっと早くから介入できていたら…という後悔が残った事例です。患者情報87歳、女性基礎疾患膵体部がん(c Stage4b、本人へは未告知)、左加齢性黄斑変性症既往歴子宮筋腫手術、腰椎圧迫骨折、左大腿部頸部骨折診察間隔毎週訪問処方内容1.トラセミド錠4mg 1錠 分1 朝食後2.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後3.ナイキサン錠100mg 2錠 分2 朝食後・就寝前4.酪酸菌配合錠 4錠 分2 朝食後・就寝前5.パンクレリパーゼカプセル150mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前6.乾燥硫酸鉄徐放錠 2錠 分2 朝食後・就寝前7.ポラプレジンク錠75mg 2錠 分2 朝食後・就寝前8.ロペラミドカプセル1mg 2カプセル 分2 朝食後・就寝前9.スボレキサント錠15mg 1錠 分1 就寝前10.ロフラゼプ酸エチル錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイントこの患者さんは、膵体部がんの進行による疼痛と頻回の下痢で体力消耗が激しく、その便処理のために同居する長女の介護負担が非常に大きい状態でした。内服薬の管理も本人では難しく、出勤前と帰宅後に内服支援をする長女のために朝食後と就寝前で統一していました。下痢に関しては以前から悩みの種で、過去の治療において半夏瀉心湯やタンニン酸アルブミンで治療をするも抑えることはできず、現在の治療でも整腸薬のみではまったく効果はありませんでした。ロペラミドも追加しましたがコントロールには至らず、本人と長女の精神的・身体的な疲弊が限界に達していました。そのような中、医師より、どうにか今の服薬管理環境で下痢をコントロールできる内服薬はないかという電話相談がありました。この患者さんは、過去に子宮筋腫の手術歴があり、イレウスのリスクもあることから止瀉作用の過剰発現には注意を払う必要があります。しかし、今も疼痛があり、今後も病勢が進行する可能性から、オピオイド導入のタイミングと考えて、腸管内のオピオイド受容体を刺激して腸管蠕動を抑制するコデインリン酸塩錠の投与について検討しました。処方提案と経過医師に、疼痛と排便コントロールの両方を兼ねて、現行のロペラミドに加えて、弱オピオイドのコデインリン酸塩錠の追加を提案しました。用法については、長女より夜間から明け方の便失禁で困っているという話があったため、20mg錠を朝・夕食後(長女帰宅時に服用)・就寝前の分3で服用する方法を伝えました。医師からは、強オピオイドの導入も考えていたが段階を踏んで治療をしよう、と承認を得ることができ、早速当日の夜より服用開始となりました。投与開始3日目にフォローアップのため訪問したところ、夜間の便失禁が減り、本人と長女の心身の負担が軽減できていました。しかしその後、これまでの度重なる便失禁や病状悪化が影響してか、食事がほとんど摂れずに水分摂取がやっとの状態になっていきました。そして、病状悪化から内服も困難な状態となり、フェンタニルクエン酸塩貼付薬とモルヒネ塩酸塩水和物液での緩和医療へ切り替えることになりました。複数の止瀉薬を検討していた段階で提案することができず、医師から相談を受けるまでなかなか知恵を絞りきれなかったことを反省する事例となりました。

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がん患者、抗凝固薬の中止時期を見極めるには/日本癌治療学会

 がん患者は合併症とどのように付き合い、そして医師はどこまで治療を行うべきか。治療上で起こりうる合併症治療とその中止タイミングは非常に難しく、とりわけ、がん関連血栓症の治療には多くの腫瘍専門医らは苦慮しているのではないだろうかー。 10月23日(金)~25日(日)にWeb開催された第58回日本癌治療学会学術集会において、会長企画シンポジウム「緩和医療のdecision making」が企画された。これには会長の弦間 昭彦氏の“decision makingは患者の治療選択時に使用される言葉であるが、医療者にとって治療などで困惑した際に立ち止まって考える機会”という思いが込められている。今回、医師のdecision makingに向けて発信した赤司 雅子氏(武蔵野赤十字病院緩和ケア内科)が「合併症治療『生きる』選択肢のdecision making-抗凝固薬と抗菌薬-」と題し、困惑しやすい治療の切り口について講演した。本稿では抗凝固療法との向き合い方にフォーカスを当てて紹介する。医師のバイアスがかからない意思決定を患者に与える がん治療を行いながら並行して緩和医療を考える昨今、その場に応じた1つ1つの細やかな意思決定の需要性が増している。臨床上のdecision makingは患者のリスクとベネフィットを考慮して合理的に形成されているものと考えられがちであるが、実際は「多数のバイアスが関係している」と赤司氏は指摘。たとえば、医師側の合理的バイアス1)として1)わかりやすい情報、2)経験上の利益より損失、3)ラストケース(最近経験した事柄)、4)インパクトの大きい事象、などに左右される傾向ある。これだけ多数のバイアスのかかった情報を患者に提供し、それを基にそれぞれが判断合意する意思決定は“果たして合理的なのかどうか”と疑問が残る。赤司氏は「患者にはがん治療に対する意思決定はもちろんのこと、合併症治療においても意思決定を重ねていく必要がある」と述べ、「とくに終末期医療において抗凝固薬や抗菌薬の選択は『生きる』という意味を含んだ選択肢である」と話した。意思決定が重要な治療―がん関連血栓症(CAT) 患者の生死に関わる血栓症治療だが、がん患者の血栓症リスクは非がん患者の5倍も高い。通常の血栓症の治療期間は血栓症の原因が可逆的であれば3ヵ月間と治療目安が明確である。一方、がん患者の場合は原因が解決するまでできるだけ長期に薬物治療するよう現時点では求められているが、血栓リスク・出血リスクの両方が高まるため薬剤コントロールに難渋する症例も多い。それでも近年ではワーファリンに代わり直接経口抗凝固薬(DOAC)が汎用されるようになったことで、相互作用を気にせずに食事を取ることができ、PT-INR確認のための来院が不要になるなど、患者側に良い影響を与えているように見える。 しかし、DOACのなかにはP糖タンパクやCYP3A4に影響する薬物もあることから、同氏は「終末期に服用機会が増える鎮痛剤や症状緩和の薬剤とDOACは薬物相互作用を起こす。たとえば、アビキサバンとデキサメタゾンの併用によるデキサメタゾンの血中濃度低下、フェンタニルやオキシコドン、メサペインとの相互作用が問題視されている。このほか、DOACの血中濃度が2~3倍上昇することによる腎機能障害や肝機能障害にも注意が必要」と実状を危惧した。DOACの調節・中止時の体重換算は今後の課題 また、検査値指標のないDOACは体重で用量を決定するわけだが、悪液質が見られる場合には筋肉量が低下しているにも関わらず、浮腫や胸水、腹水などの体液の貯留により体重が維持されているかのように見えるため、薬物投与に適した体重を見極めるのが難しい。これに対し、同氏は「自施設では終末期がん患者の抗凝固療法のデータをまとめているが、輸血を必要としない小出血については、悪液質を有する患者で頻度が高かった。投与開始時と同量の抗凝固薬を継続するのかどうか、検証するのが今後の課題」と話した。また、エドキサバンのある報告2)によると、エドキサバンの血中濃度が上昇しても大出血リスクが上昇するも脳梗塞/塞栓症のリスクは上昇しなかったことから、「DOACの少量投与で出血も塞栓症も回避することができるのでは」とコメント。「ただし、この報告は非がん患者のものなので、がん患者への落とし込みには今後の研究が待たれる」とも話した。 さらに、抗凝固薬の中止タイミングについて、緩和ケア医とその他の医師ではそのタイミングが異なる点3)、抗凝固薬を開始する医師と中止する医師が異なる点4)などを紹介した。 このような臨床上での問題を考慮し「半減期の短さ、体内での代謝などを加味すると、余命が短め週の単位の段階では、抗凝固療法をやめてもそれほど影響はなさそうだが、薬剤選択には個々の状況を反映する必要がある」と私見をまとめ、治療の目標は「『いつもの普段の自分でいられること』で、“decision making”は合理的な根拠を知りながら、その上で個別に考えていくことが必要」と締めくくった。

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第17回 治療編(1)薬物療法・その4【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第17回 治療編(1)薬物療法・その4前回侵害受容性疼痛に対し、わが国で非麻薬系オピオイドとして使用されているトラマドール製剤とブプレノルフィン貼付薬について解説しました。今回は、さらに痛みの程度が強い患者さんに使用する麻薬系オピオイドのコデイン、モルヒネ、フェンタニルについて説明したいと思います。(1)コデイン<作用機序>コデインは、投与量の5~15%が肝臓で代謝されることで、CYP2D6により産出されるモルヒネとなり、鎮痛効果が得られます。産出されたモルヒネがオピオイド受容体と結合することで、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>モルヒネと同様に考えて使用します。コデインリン酸塩散には1%、10%、原末があります。また、コデインリン酸塩錠には5mg、20mgがあります。通常は、1回20mg錠を1日3回投与します。ただし、モルヒネ換算には幅があり、鎮痛作用を目的にする場合には、鎮咳目的の場合と異ってかなりの量が必要になります。1%散として使用する場合には、1回2g、1日3回6gの投与になりますので、漢方薬並みの用量となります。通常は麻薬扱いですが、 内容量が少ない1%散、5mg錠は、投与量と関係なく非麻薬扱いになります。副作用として、嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、ふらつき、傾眠、意識消失などがあります。(2)モルヒネ<作用機序>オピオイドの基本薬です。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>次の項に示した合成麻薬フェンタニルの基本薬物になります。錠剤は10mgですが、いきなり10mg錠剤ではなく、末として3mg、5mg、8mgと段階的に体が慣れてくるたびに増量していきます。もちろん、途中で疼痛が緩和されれば、その投与量で維持していきます。また、1日の投与量が15mgに達すれば、フェンタニル貼付剤の適応(文末の表を参照)になります。(3)フェンタニル貼付剤<作用機序>モルヒネと同様、強オピオイドに分類されます。オピオイド受容体と結合して鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>フェンタニル貼付剤には、3日用の「デュロテップMTパッチ」、1日用の「フェントスパッチ」「ワンデュロパッチ」が適応されます。モルヒネ経口剤で30mgが「フェントスパッチ1mg」「デュロテップMTパッチ2.1mg」「ワンデュロパッチ0.84mg」に相当します。貼付剤なので、貼付する部位を毎回ずらしていきます。また、温度が高くなると、吸収が増えるので、入浴などの際には気を付けなければなりません。そのために、入浴が好きな患者さんでは、1日用のパッチを入浴前にいったん外し、入浴後に再度貼付される方もいます。なお、本剤の投与に際してはeラーニングの受講が必要です。モルヒネおよびフェンタニルは、医療用麻薬に分類される強オピオイドであり、乱用、依存、退薬症候、長期処方に伴う鎮痛耐性、鎮痛過敏、腸機能、性腺機能障害などに注意が必要です。貼付剤では掻痒、発赤などの皮膚症状が見られることがありますので、貼付部位をローテーションすることが重要です。以上、痛み治療の第3段階における薬物について、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。難治性疼痛患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は神経ブロックについて解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S156-S157

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「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン」6年ぶりの改訂

 『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版』が7月22日に発刊された。今回の改訂は2014年版が発刊されてから6年ぶりで、ヒドロモルフォン(商品名:ナルサスほか)、トラマドール塩酸塩の徐放性製剤(商品名:ワントラム)などの新規薬物の発売や新たなエビデンスの公表、ガイドライン(GL)の作成方法の変更などがきっかけとなった。本書の冒頭では日本緩和医療学会理事長の木澤 義之氏が、「分子標的薬ならびに免疫チェックポイント阻害薬をはじめとするがん薬物療法が目覚ましい発展を遂げていることなどを踏まえて改訂した」と述べている。 がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の主な改訂点については、8月9日~10日にWeb開催された「緩和・支持・心のケア 合同学術大会」での教育講演「『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)』の概要」でも発表され、馬渡 弘典氏(横浜南共済病院 緩和支持療法科)が解説した。がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインとして必要な情報に絞る まず、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの改訂版は作成方法の変更により計325ページから185ページへと大幅にボリュームダウン。大幅に絞られた臨床疑問は65項目から28項目に絞られ、Appendixには委員会で討論したが根拠が乏しく解説文に記載しなかったこと、現場の臨床疑問・現在までの研究と今後の検討課題が記載された。以前まで取り上げられていた「麻薬に関する法的・制度的知識」「がん疼痛マネジメントを改善するための組織的な取り組み」「薬物療法以外の痛み治療法(放射線療法、神経ブロック、骨セメント)」はがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインの枠組みでは扱いづらくなったとのことで2020年版では割愛されたが、「大切な事項なので書籍などで確認を」と述べた。2020年版では突出痛の定義が近年の考えを加味して変更された 馬渡氏はがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版を作成する際に生じたエビデンスと推奨のギャップについて解説した上で、疼痛強度に応じた鎮痛薬の使用方法を説明した。まず、中等~高度のがん疼痛についてはCQ3~7*を示し、「中等~高度の疼痛がある患者に対して、強オピオイド間の優劣については今回のシステマティックレビューでは認められなかったため、本ガイドラインではどの薬剤を選択しても良いと結論付けられている」と説明。CQ6(がん疼痛のある患者に対して、フェンタニルの投与は推奨されるか?)については、今年6月末にフェンタニルの貼付剤(商品名:フェントステープ)がオピオイド鎮痛剤未使用のがん疼痛患者へ適応となったことにも触れた。また、それ以前に決定稿になったことを断ったうえで、フェンタニルによる初回投与は、『投与後に傾眠、呼吸抑制の重篤な有害作用の有無を継続して観察出来るとき』の条件付き推奨となったことを述べた。さらに、「添付文書にも 増量時の注意事項が書かれているので、注意して経過観察してほしい」と述べた。*CQ3~7は、「がん疼痛のある患者に対して、各薬剤(モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、フェンタニルタペンタドール)の投与は推奨されるか?」について記載。 次に、2018年のWHOのガイドライン改訂で、3段階ラダーの表現が本文から付録に相当するANNEXに移ったが、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版でも中等度のがん疼痛では「強い推奨が弱オピオイドから強オピオイドに変更された」点について説明。CQ8(がん疼痛のある患者に対して、コデインの投与は推奨されるか?)やCQ9(がん疼痛のある患者に対して、トラマドールの投与は推奨されるか?)、CQ23(がん疼痛のある患者に対して、初回投与のオピオイドは、強オピオイドと弱オピオイドのどちらが推奨されるか?)の内容に反映されている。 突出痛については、「突出痛の定義は国際的に決まったものはないが、『持続痛の有無や程度、鎮痛薬治療の有無にかかわらず発生する一過性の痛みの増強』から『定期的に投与されている鎮痛薬で持続痛が良好にコントロールされている場合に生じる、短時間で悪化し自然消失する一過性の痛み』へと、近年の考えを加味して変更された」と解説した。また、がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインにおける突出痛に投与するオピオイドの薬剤の用語の統一についても触れ、総称区分を以下のように示した。●速放性製剤:経口モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドンなど●経粘膜性フェンタニルフェンタニル口腔粘膜吸収製剤●レスキュー薬:突出痛に投与するオピオイドの経口薬、注射剤、坐剤すべてがん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点 このほか、がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020年版の変更点として、腎機能低下時の投与や便秘時について解説。CQ17(オピオイドが原因で、便秘のあるがん患者に対して、下剤、その他の便秘治療薬の投与は推奨されるか?)やCQ22(がん疼痛のある、高度の腎機能障害患者に対して、特定のオピオイドの投与は推奨されるか?)を示し、「高度の腎機能障害患者にフェンタニルやブプレノルフィンの“注射剤”を推奨していること。コデイン、モルヒネを投与する場合は短期間で少量から投与すること。軽度から中等度の腎障害では減量すればどのオピオイドも投与可能。ただし、ブプレノルフィンは高度の腎機能障害がある時や、ほかの強オピオイドが投与できない時に限定する」と述べた。<今回からがん疼痛の薬物療法に関するガイドラインに追加された主な新規薬剤>・ヒドロモルフォン(商品名:ナルサス、ナルラピド、ナルペイン)・オキシコドン塩酸塩水和物徐放錠(同:オキシコンチンTR錠)[オキシコンチン錠の販売中止に伴う]・トラマドール塩酸塩(同:トラマールOD錠、ワントラム)とアセトアミノフェン配合剤(同:トラムセット)[カプセル剤の販売中止に伴う]・ミロガバリン(同:タリージェ)・ナルデメジン(同:スインプロイク)とその他の便秘治療薬(ポリエチレングリコール製剤、リナクロチド[同:リンゼス]、エロピキシバット[同:グーフィス])<がん疼痛の薬物療法に関するガイドラインから削除された主な薬剤>・モルヒネ製剤の一部(同:カディアン、ピーガード)・エプタゾシン(同:セダペイン)、ジヒドロコデインリン酸塩(同:リン酸ジヒドロコデイン)、ペチジン塩酸塩(同:ペチジン塩酸塩「タケダ」) 今後の予定として、同氏は2020年版のガイドライン作成過程で用いた各種のテンプレートを掲載した詳細資料を作成し、『本ガイドライン作成の経過やより詳細な内容を知りたい読者がインターネット上で閲覧できるようにする』『CQ、ステートメントを英文化し、国際紙に掲載する』などを掲げた。また日本緩和医療学会より一般市民向けに2017年に出版されている「患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド 増補版」も改訂が必要とされれば速やかに改訂を行うこととすると述べ、「教科書などとうまく使い分けて役立ててもらえれば」と締めくくった。

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「働き方改革」一歩前進へ-ロボット麻酔システム-

 2019年4月16日、福井大学医学部の重見 研司氏(麻酔・蘇生学教授)、ならびに松木 悠佳氏(同、助教)とその共同研究者らは、全身麻酔の3要素である鎮静・鎮痛・筋弛緩薬をすべて自動的に制御する日本初のシステムについて厚生労働省で記者発表した。本会見には共同研究者の長田 理氏(国立国際医療研究センター麻酔科診療科長)、荻野 芳弘氏(日本光電工業株式会社 呼吸器・麻酔器事業本部専門部長)も同席し、実用化に向けた取り組みについて報告した。なぜ麻酔システムを開発したのか 近年、全身麻酔が必要な手術件数は全国的に年々増加傾向にある。他方で、医師の「働き方改革」が叫ばれているが、医師偏在など問題解決の糸口は未だ見えていない。これに対し、労働時間の削減とともに質の担保が不可欠と考える重見氏は、「血圧測定や人工呼吸は看護師による手助けを要する。しかし、容態安定時や、繰り返しになるような単純作業は、機械の助けを借りることで“ついうっかり”がなくなり、安全面にも貢献する」と述べ、「機械補助によって麻酔科医の業務負担が劇的に軽減される。働き方改革と医療の質のバランスをとるための技術が必要」と、開発の経緯を語った。機械化のメリットとは ロボット麻酔システムは、“ロボット”と銘打っているが、実は、制御用のソフトウェアのことを指す。このシステムは、脳波を用いて薬剤を自動調節するため、医療ビッグデータやAIに頼らずとも、麻酔薬を至適濃度に保つことができる。 このシステムは、1)バイタルサインを測定し、催眠レベルの数値、筋弛緩状態を出力するモニター、2)制御用コンピューター、3)麻酔薬3種を静脈に注入するシリンジポンプの3つで構成されている。また、重見氏によると「麻酔科医の生産性・患者QOL・医療経済性の向上、患者安全への寄与、さらには、“診断”を加味して“加療”するシステム」という点が特徴だという。 期待できる業務として、鎮痛・鎮静・筋弛緩薬の初回投与および投与調節、脳波による鎮静度評価、筋弛緩薬の投与調節があり、本システムは婦人科の腹腔鏡手術、甲状腺、腹部などの脳波モニターに影響を及ぼさない術野での使用が可能である。松木氏は「これらを活用することで、麻酔科医の時間的余裕が生まれ、容態急変時など患者の全身状態の看視に注力ができる」と、麻酔科医と患者の両者における有用性について語った。実用化までの道のり これまで、2017年より2つの予備研究を実施し100例近くのデータ収集を行うことで、自動制御に関するアルゴリズム改善に役立ててきた。今年3月より臨床研究法に則り、特定臨床研究として、ロボット麻酔システムを使用し、全身麻酔時に使用する静脈麻酔薬の自動投与調節の有効性と安全性の検討に関する対象無作為化並行群間比較試験を開始。目標症例数は福井大学と国立国際医療研究センターを併せて60例とし、2019年9月までを予定。現時点ですでに21例が登録を終えている。今後、治験などを経てシステム運用のための講習会の企画や2022年の発売を目指す。■関連記事ソーシャルロボットによる高齢者の認知機能検査の信頼性と受容性

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合成麻薬は心にも身体にも恐ろしい!(解説:後藤信哉氏)-946

 米国は競争社会である。経済格差が深刻化するなかで、絶望的に生きる人が多い国であることは長く住んでみるとわかる。心が病んでいる国では麻薬などの広がりを抑えることが難しい。麻薬中毒症例には合成麻薬としてのカンナビノイドが使用される。各種の重篤な疾病の末期には人工的に多幸感、鎮痛が必要な症例もいるかもしれない。大麻中に含まれるカンナビノイドを合成して医療応用に使おうという方向性は日本にもある。 しかし、本論文はカンナビノイドが心に作用するのみならず、身体にも破滅的副作用を惹起することを示している。ワルファリンはvitamin K依存性の凝固因子の機能的完成を阻害する。強力な抗凝固作用が継続すれば致死となる。その効果を利用したbrodifacoumは殺鼠剤として使用される。このbrodifacoumが合成麻薬に混入して、肝臓における酵素反応の競合を介して重篤な出血イベントを起こすことを本研究は示している。 薬は怖い。分子は小さいが、ナノメートルスケールのわずかな変化がマイクロメートルスケールの細胞、メートルスケールの人体と増幅される。必要な症例に十分なモニタリング下での使用という原則が何よりも重要である。

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陣痛緩和にレミフェンタニル自己調節鎮痛法が有用/Lancet

 陣痛時の疼痛緩和において、静脈内レミフェンタニル自己調節鎮痛法(PCA)は、ペチジンの筋肉内投与に比べ、硬膜外麻酔への変更を要する女性が少ないことが、英国・シェフィールド大学のMatthew J. A. Wilson氏らの検討「RESPITE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2018年8月25日号に掲載された。陣痛の緩和のためにペチジン筋注を受けた女性の約3分の1が、その後に硬膜外麻酔を要し、良好な疼痛緩和が得られるものの、器械的経膣分娩のリスクが増加する。陣痛時のレミフェンタニルPCAはペチジンの代替法とされるが、十分には普及していないという。英国の14施設で401例を登録 本研究は、英国の14の産科病棟が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、妊娠期間37週以上、胎児が単胎・頭位で陣痛がみられ、オピオイドによる疼痛緩和を希望する16歳以上の女性であった。被験者は、レミフェンタニルPCA(必要に応じて40μgをボーラス投与、次回投与までのロックアウト時間は2分)またはペチジン筋注(4時間ごとに100mgを投与、24時間で最大400mg)を行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、試験登録後に硬膜外麻酔を受けた女性の割合とした。また、視覚アナログスケール(VAS、0点:痛みなし、100点:最も強い痛み)を用いて、30分ごとに疼痛緩和効果を評価した。 2014年5月13日~2016年9月2日の期間に401例の女性が登録され、レミフェンタニルPCA群に201例、ペチジン筋注群には200例が割り付けられた。硬膜外麻酔への変更が半減、緩和効果も良好 実際に試験薬の投与を受けたのは、レミフェンタニルPCA群が186例(93%)、ペチジン筋注群は154例(77%)であった。投与を受けない主な理由は、投与が可能になる前に出産(レミフェンタニルPCA群12例、ペチジン筋注群17例)、無作為化直後のオピオイド投与前に、母親が硬膜外麻酔を要すると決断(ペチジン筋注群22例)などであった。同意を取り消したペチジン筋注群の1例を除く400例がintention-to-treat解析の対象となった。 無作為化時の平均年齢は、レミフェンタニルPCA群が29.4歳(SD 6.1)、ペチジン筋注群は29.3歳(6.1)、白人がそれぞれ73%、79%で、未経産婦が60%、59%だった。 硬膜外麻酔への変更の割合は、レミフェンタニルPCA群が19%(39/201例)と、ペチジン筋注群の41%(81/199例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.0001)。 VAS疼痛スコア中央値は、レミフェンタニルPCA群がペチジン筋注群よりも13.91点(95%CI:-21.40~-6.43)低下し、有意な差が認められた(p=0.0003)。VAS疼痛スコアの最高点の差には、有意差はなかった(平均差:-4.44点、95%CI:-10.93~2.05、p=0.18)。 分娩様式には、両群間に有意な差が認められた(p=0.02)。鉗子、吸引による器械的分娩の割合は、レミフェンタニルPCA群が15%と、ペチジン筋注群の26%に比べ有意に低かった(RR:0.59、95%CI:0.40~0.88、p=0.008)。帝王切開の割合は両群とも21%だった。呼吸抑制および過鎮静は両群間に差はなく、いずれもまれだった。 新生児はすべて、出生後5分時のApgarスコアが4点以上であった。蘇生を要する新生児の割合にも差はみられなかった(レミフェンタニルPCA群:10%、ペチジン筋注群:11%)。 母親の満足度は、9項目中2項目でレミフェンタニルPCA群のほうが有意に良好で(「陣痛中の疼痛緩和は有効だった」:p=0.0003、「陣痛の疼痛緩和に満足した」:p=0.0003)、他の項目には差がなかった。また、試験薬に直接起因する重篤な有害事象や薬物反応は認めなかった。 著者は、「本試験で得られたエビデンスは、分娩時の女性の標準治療としてのペチジンに疑問を呈し、陣痛時のオピオイドベースの疼痛緩和に関して、根本的な再評価を迫るものである」と指摘している。

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バージャー病〔Buerger's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義動脈閉塞症の1つである。バージャー病(Buerger's disease)の呼称は、本疾患を閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans:TAO)として初めて記述したLeo Buerger(ドイツ語読みではビュルガー)氏に由来する。四肢末梢の主として下腿以遠や前腕以遠の動脈に、分節的に炎症性の血栓閉塞を生じ、しばしば肢端に潰瘍や壊死を来す。動脈のみならず、皮下静脈にも移動性かつ再発性の血栓性静脈炎(逍遥性静脈炎/遊走性静脈炎)を生じる。発病や経過には喫煙が深く関与する。■ 疫学20~40代の喫煙者に好発し、男性患者が大半である。動脈病変が生じる頻度は、下肢のほうが上肢よりも高い。元より希少疾患であるが、先進国ではさらに減少し、わが国でも1970年代から減少の一途をたどっている。一方で、中国、インド、トルコなどでは依然として比較的多くの発症がみられる。■ 病因病因は未解明だが、喫煙は発病の強力な誘因であり、病気の進行を助長する。感受性遺伝子や免疫機序の関連を指摘した報告もある。近年では、歯周病菌感染の関与が注目されている。■ 症状初診時の症状は、足趾や手指の冷感、感覚異常、疼痛、虚血性紅潮やチアノーゼ、レイノー現象が多く、すでに潰瘍や壊死を生じている患者も少なくない。間歇性跛行や労作時痛は、初期には足底筋や手部に生じるが、患者にはあまりはっきりと自覚されないことが多く、虚血による症状とも気付かれにくい。あるいは整形外科的な疾患と判断されがちである。虚血のせいで、爪周囲のささくれや靴擦れなどささいな傷が、治りにくく易感染性で、しばしば急速に潰瘍形成や壊死へと進行する。潰瘍や壊死部には、強い疼痛を伴うことが多い。逍遥性静脈炎は、動脈病変に先行することも、後から生じることもある。皮下に索状の有痛性硬結を生じる。■ 予後喫煙が影響する。病勢は禁煙によって寛解することが多く、逆に喫煙を続ければ進行性で、肢の大切断への危険が高まる1)。肢の大切断は、患者の運動機能を低下させ、生活を著しく阻害する。通常は四肢以外の臓器が侵されることはなく、生命予後は良好とされるが、患者を生涯観察したデータは少ない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)特異的な診断マーカーがないため、臨床診断、すなわち症状および臨床所見と動脈の画像所見に基づき、他疾患を除外して診断を行う。若齢発症、喫煙歴、逍遥性静脈炎の既往は、本疾患の診断を後押しする2)。■ 臨床所見前述のような慢性虚血の症状や、逍遥性静脈炎がみられる。身体診察では、患肢の末梢部での皮膚温低下や、動脈拍動の減弱・消失をみる。下肢の虚血を確認する検査には、足関節血圧や足関節上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)の測定がある。ただし、本疾患では足関節以遠に病変を有することが多く、ABIだけでは評価が不十分なこともありうる。したがって、手足の指尖容積脈波、足趾血圧や足趾上腕血圧比(toe brachial index:TBI)、手指血圧も測定する。皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)や経皮酸素分圧(transcutaneous oxygen tension:tcPO2)などの微小循環検査も虚血の重症度評価に役立つ。レイノー現象の再現には、冷水負荷でのサーモグラフィー検査が有用である。■ 動脈の画像所見通常、下腿以遠や前腕以遠の動脈に病変がある。病変部には、動脈硬化性の壁不整(虫食い像、石灰化沈着など)がない。閉塞は途絶状や先細り状が多く、多発的分節的閉塞を呈する。また、しばしば二次血栓による閉塞の延長を伴う。慢性閉塞であるため側副血行路が発達し、コルクの栓抜き状(コイル状)や樹根状、ブリッジ状を呈する3)。ただし、これらは動脈硬化のない慢性動脈閉塞に共通の非特異的な所見であり、膠原病などでも類似の所見がみられる。膠原病では側副血行路の発達が乏しいとされるが、画像だけから両疾患を鑑別するのは難しい。■ 鑑別すべき疾患とくに閉塞性動脈硬化症との鑑別が重要である。病理組織学的には明らかに異なる疾患であるが、動脈の組織診を行うのは容易ではないため、画像検査で罹患部位に動脈硬化の所見がないことが、1つの重要な鑑別点である。患者が動脈硬化の危険因子を喫煙歴以外に有さないことも、鑑別診断の材料になる。しかし、近年は若年者でも脂質代謝、耐糖能、血圧の異常を有することが多い。加えて、動脈硬化は10代から始まるともいわれる。さらに、画像診断が進歩し、微細な初期変化を捉える可能性もあるため、診断にはより慎重な判断が求められる。全身性エリテマトーデスや強皮症などの膠原病との鑑別のためには、発熱や体重減少などの全身症状、他臓器の血管炎症状、免疫学的血液検査の所見などを評価する。外傷性動脈血栓症との鑑別には外傷歴が重要で、慢性外傷の可能性も念頭に、職業歴やスポーツ歴など患者の訴えに上がらないことも含め、多方面から病歴聴取を行う。とくに上肢で近位部に病変がある場合は、胸郭出口症候群による血栓症や塞栓症も疑う。下腿の虚血性疾患として、膝窩動脈捕捉症候群や膝窩動脈外膜嚢腫との鑑別には、膝窩部の触診と、動脈周囲の軟部組織を含めた画像検査を行う。動脈と静脈の両者を侵す疾患である血管ベーチェット病とは、口腔内アフタや陰部潰瘍など、他の皮膚症状や眼病変、動脈瘤の検索などを行い鑑別する。心房細動や心筋梗塞後の左室瘤に起因する血栓塞栓症との鑑別には、心エコー図検査が有用である。動脈瘤からの飛散血栓による塞栓症や、動脈壁の不整形粥腫に起因するコレステリン塞栓症などとも鑑別を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)バージャー病の治療目標は、救肢ならびに疼痛からの解放である。耐え難い疼痛は患者の精神をむしばむことがあり、若年での肢切断は生活と将来に多大なダメージを与える。治療における最重要かつ最難関の課題は、「禁煙」である。タバコは本疾患の誘発および増悪因子であるため、すべての患者で最初に行うのは禁煙を含めた保存的治療である。禁煙を厳守し続ければ、それだけで病状の寛解は期待できる。逆に、喫煙を続ければ、指趾や肢の切断に至る危険が高まる。保存的治療で重症虚血が軽快しない患者では、外科的治療を考慮する。いかなる治療も、有効性は禁煙を継続できるか否かによって左右されうる。■ 保存療法本疾患の炎症を抑える特効薬はない。禁煙を徹底し、受動喫煙も回避する。手足に傷や靴擦れをつくらないよう保護し、清潔を保つ。履物にも注意し、手足の皮膚に異常がないかを患者自身でも観察してもらう。本疾患の発症には歯周病菌の関与も示唆されており、口腔内の衛生も保つ。潰瘍や壊死、安静時痛がなく、ある程度の距離を歩行できる患者では、運動療法も間歇性跛行の歩行距離の延長に効果がある。血流改善を目的とした薬物治療では、プロスタグランジン製剤(アルプロスタジル注、リポPGE1、リマプラスト、ベラプロスト)が有効といわれる。ただし高いエビデンスは示されておらず、無効例も少なくない。経口投与で効果が不十分な場合は、経静脈投与やカテーテル留置による経動脈投与も考慮する。■ 外科的治療保存療法で安静時疼痛や潰瘍・壊死が改善しない場合は、血行再建術を考慮する。ただし、下肢では病変が下腿以下の細径動脈に多発し、良好なrun-offを期待できる開通先がないことが多い。下腿以下へのバイパス手術では、代用血管に自家静脈の使用が勧められるが、自家静脈が静脈炎で荒廃し、利用できない場合もある。近年では血管内治療について、再狭窄率が高く反復治療を要するものの、肢切断の回避率はバイパス術と劣らず、バイパス手術が不可能な患者に対しては選択可能との見解もある4)。血行再建術が不可能な患者では、上肢では胸部の、下肢では腰部の交感神経遮断術を考慮する。虚血が改善しない肢には、激しい疼痛を伴うことが多い。一般の鎮痛薬では疼痛制御が困難なことが多く、オピオイド系鎮痛薬がしばしば必要になる。フェンタニル貼付薬は、保険診療にて使用可能である。これらの治療で改善しない潰瘍や疼痛、広範囲な壊死や荷重部の壊死、制御できない感染を伴う場合などは、肢切断もやむを得ない。上肢では交感神経遮断で症状が落ち着くことが多く、血行再建術や大切断を要することは少ない。4 今後の展望血管内治療のデバイスや技術の進歩は、近年目覚ましい。バイオテクノロジーを駆使した、各種の血管新生療法(遺伝子治療、細胞移植療法など)5)や、抗血栓性に優れた人工血管の開発も著しい進展をみせており、本疾患の肢虚血でも治療の向上が期待される。また、病因の解明が進めば、本疾患の予防や根治的な治療にもつながりうる。5 主たる診療科血管外科、心臓血管外科、循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター バージャー病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患等政策研究事業 難治性血管炎に関する調査研究(医療従事者向けの情報)患者会情報北海道バージャー病友の会(患者とその家族向けの情報)1)Shigematsu H, et al. Int Angiol. 1999;18:58-64.2)Shionoya S. Cardiovasc Surg. 1993;1:207-214.3)塩川優一 編集. 厚生省特定疾患系統的血管病変に関する調査研究班臨床分科会報告書.厚生省公衆衛生局難病対策課;1977.p.1-38.4)Ye K, et al. J Vasc Surg. 2017;66:1133-1142.5)Kondo K, et al. Circ J. 2018;82:1168-1178.公開履歴初回2018年06月12日

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